鉄欠乏性貧血(てつけつぼうせいひんけつ)

鉄欠乏性貧血は、貧血の中で最もよく起きる病気のひとつです。

鉄欠乏性貧血(てつけつぼうせいひんけつ)

鉄欠乏性貧血とは、血液の中にある赤血球やヘモグロビン(血色素)の量が減っている状態を貧血といいます。貧血の原因にはさまざまなものがあり、からだの中の鉄分が不足して起きるものを、鉄欠乏性貧血といいます。鉄分はヘモグロビンの大切な成分ですので、鉄分が不足するとヘモグロビンができず、ひいては赤血球ができなくなってしまうわけです。鉄欠乏性貧血は、貧血の中で最もよく起きる病気のひとつです。

また女性は月経、分娩などの出血によって、体内の鉄分が失われる原因が男性より多いため、鉄欠乏性貧血になる人は、女性が圧倒的に多くなっています。

赤血球やヘモグロビンが不足すると、全身の組織や臓器に酸素が十分いき渡らなくなり、エネルギー源が不足して、組織や臓器の働きが弱まります。このために、からだがだるい、寒さを人より激しく感じる、ひどい場合は皮膚や粘膜が赤みがなくなるなど、いろいろな貧血の症状が起きます。

体内の血液量が減ったことが原因で、貧血が起きることはありますが、貧血だから血液全体の量が少ない、とはいえません。また脳貧血は、脳を流れる血液が減って、顔が青白くなり、意識がなくなったりするもので、貧血と同じではありません。ただし、貧血の人が脳貧血になることはあります。

鉄欠乏性貧血の症状

鉄欠乏性貧血の症状は、貧血になると、全身の組織や臓器に酸素が十分いき渡らなくなり、エネルギー源が不足して、からだ全体の組織や臓器の働きが弱まります。このために、全身的な症状が出たり、からだのあちこちで多様な症状が起きるのです。

貧血の一般的な症状は、からだがだるい、すぐ疲れる、頭が重い、立ちくらみがする、耳鳴りがする、寒さを人よりも激しく感じるなどです。酸素不足を補おうとして、心臓や肺がよけいに働くため、のぼり慣れた階段や坂を上がったり、少し運動しただけでも、息切れや動悸がするのも、一般的な症状にあげられます。

鉄欠乏性貧血が進行すると、皮膚や粘膜の赤みがなくなり、少し黄みを帯びたりします。そのため、まわりの人から顔色が悪いといわれたりします。さらに、足が少しむくむ、微熱が出る、食欲がなくなる、吐き気を感じるなどの症状があらわれることもあります。

重い鉄欠乏性貧血が長く続くと、口の端に亀裂ができる(口角炎)、爪がスプーンのように中央部がくぼんで反り返る、もろく欠けやすくなる、食道粘膜が萎縮するために、ものが飲み込みにくくなるなどの症状がみられることもあります。

鉄欠乏性貧血のほとんどは、徐々に進行して、症状がゆっくりとあらわれます。そのため、からだがその状態に慣れ、貧血の程度が強くなっても、症状を感じない人がかなりいます。

胃・十二指腸潰瘍、子宮筋腫などが原因で鉄欠乏性貧血が起きた場合は、もとの病気の症状もあらわれます。

鉄欠乏性貧血の原因

鉄欠乏性貧血の原因は、ヘモグロビンをつくるために必要な鉄分が、からだの外へ出て失われるか、食事などでからだの中にとり入れる量が不足することがあげられます。

からだの外に出る原因のひとつに、体外への出血があります。たとえば、10ccの血液が外に出ると、約5mgの鉄分が失われます。ところが、からだが1日に吸収できる鉄分は約1mgなので、失った鉄分を取り戻すのに、5日かかることになります。したがって、わずかの出血でも慢性的に続くと、鉄欠乏状態になりやすいわけです。

出血には、けがなどによる急激な出血が起こる場合のほか、痔、胃潰瘍[かいよう]、十二指腸潰瘍など、女性では子宮筋腫などで、少量ずつの出血が長く続く場合が考えられます。女性についてはさらに、月経と分娩で体外に出血することも、鉄欠乏性貧血の原因になります。

妊娠した女性では、胎児が必要な鉄分を母胎からとるため、母親の鉄分が足りなくなりがちです。授乳のときにも、母乳の中にも鉄分が含まれるため、母親の鉄分が失われやすくなります。

からだに取り込む量が不足する原因としては、鉄分の多い肉類、レバーなどの食品を、バランスよく摂取しない場合があげられます。とくに若い女性には、ダイエットなどで生野菜中心の食事を続けたため、鉄分が足りなくなることがよくあります。

鉄分のある食品をきちんととっても、胃や腸の機能に障害があるため、からだの中へ十分に吸収できないこともあります。胃炎、胃下垂などの病気になったり、胃を切る手術を受けた直後は、胃や腸での鉄吸収が不十分になり、鉄欠乏性貧血が起きやすくなります。

鉄欠乏性貧血の検査

鉄欠乏性貧血かどうかは、静脈から10ccほど採血して、その中の赤血球数、ヘモグロビン量などを調べる血液検査で、診断できます。

赤血球は正常な場合、血液1立方mmの中に、男性は450万~550万個、女性は400万~450万個含まれています。男性は400万以下、女性は350万以下で、明らかな貧血と診断されます。

ヘモグロビン量を血液1dl当たりの量で示すと、通常、成人男性は14~18g、成人女性は12~16gです。

ヘマトクリット値の検査も、貧血を診断するうえで重要です。ヘマトクリット値とは、一定の容積の血液に占める、赤血球など有形成分の容積比です。赤血球のほか白血球、血小板も有形成分ですが、有形成分の99%は赤血球であるため、ヘマトクリット値を一般に赤血球容積値とも呼んでいます。ヘマトクリット値の正常値は、男性は40~50%、女性は35~45%です。

赤血球数、ヘモグロビン量、ヘマトクリット値が正常値の範囲より低い場合、貧血と判断されます。

さらに、赤血球数、ヘモグロビン量、ヘマトクリット値の数値に、一定の計算をして出す赤血球恒数を、貧血の種類の判定に用いることもあります。

このほか、体内の鉄分の量を調べるために、血清を調べます。肝臓などに貯蔵されている鉄が、血液を移動するときは、血清中のトランスフェリンというたんぱく質と結びついて血清鉄となります。鉄欠乏性貧血が起きていると、血清鉄の量が減り、反対に鉄と結合するべきトランスフェリンは結合しないままでいるため量がふえます。また、トランスフェリン全体の量もふえます。

鉄欠乏性貧血と診断されると、その原因を調べる検査を行います。胃腸などで出血していないか調べるため、胃腸のX線検査、便の潜血反応、痔の有無などを検査します。女性の場合、月経過多、子宮筋腫なども疑われるので、婦人科の診察を受ける必要があります。

鉄欠乏性貧血の治療

鉄欠乏性貧血そのものの治療には、鉄剤を服用します。貧血が非常に強い場合、入院して、点滴や静脈注射で鉄剤を体内に入れることもあります。胃潰瘍、十二指腸潰瘍、痔、月経過多など、原因となる病気がある場合は、まずその治療を行います。

鉄剤を飲むと、間もなく赤血球数やヘモグロビン量が正常値に戻りますが、その後も2~3か月間、毎日、飲み続ける必要があります。血液中の鉄欠乏状態が解消しても、体内の鉄分はまだ不足している場合が、よくあるからです。

鉄剤の服用をやめたあと、すぐに再発した場合、最初みつからなかった出血を起こす病気が、鉄欠乏性貧血の原因となっている可能性があるので、再検査が必要です。

鉄剤を飲むと、人によっては、胃のむかつきや痛み、便秘、下痢などの症状が出る人もいますが、多くの場合、鉄剤を長く飲み続けると、症状が出なくなります。胃のむかつきや痛みは、食後すぐに鉄剤を飲んだり、胃腸薬といっしょに服用すると、起こらなくなる場合があります。医師と相談して、鉄剤の種類を変えたり、1回の服用量を減らしてもらう方法もあります。

鉄剤を飲んでいると、便が黒くなることがありますが、心配ありません。

鉄欠乏性貧血の予防

鉄欠乏性貧血の予防としては、まず偏食を避け、日ごろから牛乳、肉類、レバー、魚の血合、ホウレンソウなど、鉄分の多い食品をとるよう、心がけることです。

また胃腸での鉄分の吸収が妨げられないよう、ふだん胃腸が弱いと感じる人は、胃腸を丈夫にする努力が求められます。

女性が妊娠した場合、鉄分不足になりやすいので、妊娠中の定期検診を必ず受けて、貧血の早期発見に努めることも大切です。

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