ウイルス性肺炎(ういるすせいはいえん)

ウイルスの感染によって起きる肺炎を、ウイルス性肺炎といいます。

ウイルス性肺炎(ういるすせいはいえん)

肺炎とは、肺の奥にある肺胞を中心に起きる炎症です。肺胞は酸素と炭酸ガスの交換を行なっていて、肺の働きにとって重要な役割を果たしています。

ウイルスの感染によって起きる肺炎を、ウイルス性肺炎といいます。ウイルスが肺に感染するしくみには、からだの外から肺の中にウイルスが侵入する場合と、生まれつき、からだの中にあるウイルスが肺の中で増殖する場合があります。

原因となるウイルスが確定した場合は、インフルエンザウイルス肺炎などのように、そのウイルス名に応じた病名をつけるのが一般的です。

ウイルス性肺炎の症状

ウイルス性肺炎の症状は、原因となるウイルスによって、症状は異なります。

【かぜ症候群のウイルスによる肺炎】
軽い場合は、かぜ症候群の症状とあまり変わりません。かぜ症候群の主な症状として、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、声がれ、せき、たんなど、呼吸器に異常があらわれたり、発熱、頭痛、腰痛、全身のだるさなどの全身症状があらわれることがあります。軽い場合は、かぜ症候群にかかったあと、熱が長く続いたり、せきが激しい程度です。多くは発熱やせきの症状がしつこいため、医師の診察を受け、胸部X線撮影で一部に淡い陰影が見られることから、ウイルス性肺炎と診断されます。

重い場合は、高熱が続く、呼吸困難になる、呼吸が速くなる、激しいせきがでる、チアノーゼ(唇などが紫色がかったぶどう色になる状態)や胸痛が起きるなどの症状があらわれます。たんは比較的少量です。心臓弁膜症の人がかぜ症候群のウイルスによる肺炎を起こすと、血たん、尿量の減少、むくみなどの全身症状があらわれてきます。

【水痘肺炎】
まず全身に小さな水疱(水ぶくれ)ができます。しだいに症状が重くなり、高熱、呼吸困難や、血たんがでる、口腔粘膜がただれるなどの症状があらわれます。水痘にかかっている子どものいる家庭で、家族にこのような症状があらわれた場合は、水痘肺炎にかかったと考えられます。

【サイトメガロウイルス肺炎】
初め発熱、呼吸困難があらわれます。その後、呼吸困難がひどくなり、呼吸が浅くて速くなり、チアノーゼがあらわれます。せきやたんはあまりでません。サイトメガロウイルス肺炎は、症状がゆっくり進むものと、速く進むものがあり、速く進行するものは生命に危険が及びやすくなります。

ウイルス性肺炎の原因

ウイルス性肺炎は、ウイルスの感染が原因で、肺の奥にある肺胞やその周辺に炎症が起こります。

肺炎の原因となるウイルスには、からだの外から肺の中に侵入して、炎症を起こす外因性ウイルスと、生まれつき、からだの中にあって、肺の中で増殖して肺炎を起こす内因性ウイルスがあります。
外因性ウイルスはさらに、かぜ症候群の原因となるウイルスと、発疹の出る病気の原因となるウイルスに分けられます。

【かぜ症候群の原因となるウイルス】
インフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルスなどがあげられます。多くは、これらのウイルスによるかぜに引き続いて、肺炎が起こります。インフルエンザウイルス肺炎では、インフルエンザが流行しなかった年と比べ、流行した年のほうが死亡率が高くなります。

しかし、その時のインフルエンザウイルス肺炎が、とくに病状が重いとは言えないのです。死亡率に関係するのは流行したかどうかではなく、その年に流行したインフルエンザウイルスの毒性の強弱によると考えられます。

近年、関心が高まっているのはアデノウイルスです。咽頭炎や、感染した人がプールで泳いで流行する場合の多いプール熱の原因となるウイルスです。幼児がアデノウイルスによる肺炎にかかると重症になり、治ったあとも肺炎が起きた部位の気管支に気管支拡張症(気管支が広がり、内面に感染が起こりやすくなる病気)が残り、病気が進む場合が少なくありません。

糖尿病や心臓弁膜症、高血圧症からくる心臓病などの慢性病のある人、妊娠中の人は、かぜ症候群をきっかけに重症のウイルス性肺炎に進むことが多く、さらにウイルス性肺炎にかかったあと細菌性肺炎を併発しやすくなります。とくに心臓弁膜症の人は、かぜ症候群から重症のウイルス性肺炎を引き起こしやすいので注意が必要です。

【発疹の出る病気のウイルス】
麻疹(はしか)を起こす麻疹ウイルスや、水痘(水ぼうそう)の原因となる水痘ウイルスから肺炎が起こることがあります。麻疹ウイルスにより子どもに肺炎が起こると、重くなることが多く、気管支拡張症が残る危険性も高くなります。水痘ウイルスは、子どもが水痘にかかったとき、親にも感染して水痘肺炎と呼ばれる肺炎を起こすことがあります。

【内因性ウイルス】
生まれつき、母親から内因性ウイルスを受け継いでいる人がいます。内因性ウイルスの代表的なものは、サイトメガロウイルスです。

日本人の成人の9割以上が、サイトメガロウイルスに感染しているといわれますが、内因性ウイルスの特色として、ふだんはまったく病気を起こさないで、からだの中に潜んでいます。何かの原因で免疫力が弱まると、内因性ウイルスは急激に肺の中で増殖して肺炎を起こします。免疫力が弱まる原因として、白血病、ガン、エイズなどの病気や、臓器移植を受けた場合などがあげられます。

ウイルス性肺炎の合併症

ウイルス性肺炎の合併症は、糖尿病、心臓弁膜症、高血圧症からくる心臓病などの持病のある人、妊娠中の人の場合、かぜ症候群にかかったあと、かぜ症候群のウイルスによる肺炎が起こりやすいうえ、細菌性肺炎を合併する場合がよくあります。

細菌が感染すると、たんが膿性となり、熱がさらに高まり、胸痛もひどくなります。細菌感染が起きているかどうかは、医師に診せないと診断できないので、膿性のたんや高い熱がでたり、胸痛が強まった場合は、早めに医師の診察を受けることが大切です。内因性ウイルスのサイトメガロウイルスによる肺炎は、免疫力が低下したときにかかりやすく、カリニ肺炎を合併することがよくあります。

ウイルス性肺炎の検査

ウイルス性肺炎の検査は、肺炎が疑われる場合、胸部X線撮影を行ないます。

肺炎を起こした肺には、炎症によって、末梢血管からしみ出た水分や細胞成分が肺胞にたまるため、胸部のX線写真に、肺炎に特徴的な陰影があらわれます。また血液検査を行ない、白血球数の増加、CRP値の上昇、赤沈(赤血球沈降速度)の亢進など、炎症があることを示す指標の変化を確かめます。

原因となるウイルスは症状から推測できる場合もありますが、確定するためには、血液を取ってウイルスに対する抗体を調べる免疫血清学的検査と、たんを取ってその中のウイルスを培養して調べる方法があります。

ウイルス性肺炎の治療

ウイルス性肺炎の治療は、感染したウイルスの種類、症状などにより、治療は異なります。原因となるウイルスが、かぜ症候群や発疹の出る病気のウイルスの場合、症状が軽ければ、かぜ症候群と同じように症状をおさえる薬物を使って様子をみます。ふつう約2週間で治ります。

かぜ症候群の原因となるウイルスに対する抗ウイルス剤がないため、対症療法が中心になりますが、水痘肺炎には抗ウイルス剤のアシクロビルが有効で、よく用いられます。症状が軽い場合の治療法は、のどの痛み、頭痛、腰痛、筋肉痛などの筋肉や関節の痛み、発熱に対しては、鎮痛・解熱剤を用います。せきに対しては、鎮咳剤、たんがからむときには鎮咳[ちんがい]剤とともに去たん剤を使用します。

もうひとつ大切なことは、安静にすることです。外部から感染したウイルスに対しては、免疫のしくみによって、からだの中にそのウイルスを殺す抗体がつくられてきます。安静は、免疫力の働きをできる限り高めることにつながります。

症状が重い場合や、気管支拡張症などの後遺症があらわれる恐れがある場合は、入院による治療が必要になります。症状に応じて、呼吸困難が起きたときは酸素を投与し、高熱があるときには解熱剤を用います。治るまでに3~4週間かかります。

高齢者の場合、高熱などの症状があらわれなかったり、重症の割に症状が軽い場合がよくあり、また合併症を起こしやすいため、家族の注意が重要です。様子がおかしいと気づいたら、すぐ医師に診てもらいましょう。心臓弁膜症をもっている人がウイルス性肺炎にかかったとき、症状に心臓の肥大、血たん、尿量の減少があらわれた場合は、心不全に陥っている証拠です。心不全の治療のため、利尿剤や強心剤を用いたり、ウイルスに対する抗体を多く含むガンマグロブリンを注射する場合もあります。

内因性ウイルスのサイトメガロウイルスによる肺炎の場合、ガンシクロビルという抗ウイルス剤がよいとされますが、根本的な治療法として、肺炎が起きる原因となった白血病、がんなどの病気を治療します。ほかに、酸素投与、ビタミン剤や栄養剤などによる点滴療法、ガンマグロブリン注射が行なわれます。

熱がある間は、入浴はやめます。高齢者で高い熱がでている場合は、汗で発散する水分の量が多いので、患者が求めなくても少しさました番茶などを飲ませるようにします。ただし、心臓や腎臓に機能障害がある人は、1日に飲む量のコントロールが必要なため、医師の指示に従います。

食欲がある場合は、カロリーを上げることが望まれるので、いつもより食事を多めにとるようにします。食欲がない場合でも、流動食、かゆ、果汁などをとるようにします。

点滴によって病状が快方に向かい、食べられるようになったときは、三分がゆ、五分がゆなどから始めます。副食も消化のよいものを添えましょう。熱が完全に下がり、食事に問題がないほど回復したら、いつまでもかゆを続けないで普通食に戻します。

熱が下がり始めるなど、快方に向かうきざしがみえたら、30分ごとぐらいに寝返りをうたせて体位交換を行ないます。同じ姿勢で寝かせないことは、床ずれ予防とともに、たんの排出をよくする効果があります。医師から離床の許可がでたら、すぐに実行しましょう。早い離床は、病気の回復を早めることにつながります。

高齢者の場合、寝たきりで足を動かさないと、筋力が低下し、歩けなくなったりします。予防のため、寝たままでも、足の曲げ伸ばし、ベッドの端で足を踏ん張るといった運動を心がけましょう。

離床後はときどき、呼吸運動に重要な筋肉の力を強める運動を行ないましょう。横隔膜の筋力のためには、深呼吸や腹式呼吸を行ない、胸郭や肋間筋の筋力のためには、深呼吸しながら手を上げ下げする運動が効果的です。

ウイルス性肺炎の予防

イウイルス性肺炎の予防は、ンフルエンザが流行しそうなときは、予防注射を受けることが望まれます。乳幼児は麻疹(はしか)の予防注射を受けておきましょう。

ふだんから、かぜ症候群の予防に心がけることも重要です。とくに大切なのは、少しぐらい病原微生物が侵入してきても、その働きをおさえ込む程度の抵抗力を養っておくことです。そのために、過労や睡眠不足に陥らないよう努めたり、食事で栄養のバランスなどに気を配り、日ごろから体調を整えておくことが望まれます。

昔から、乾布摩擦をすると、かぜをひかないといわれています。乾布摩擦や夏の日光浴などで皮膚を鍛えたり、できるだけ薄着を心がけたりすると、皮膚が気温の変化に順応する能力が養われ、かぜ症候群にかかりにくくなると考えられます。

精神的な因子も、かぜをひきやすいかどうかに影響すると考えられています。極度に緊張したり気をゆるめると、かぜ症候群にかかりやすく、適度な精神的緊張をもち続けているとかかりにくいという傾向がみられます。

また一般に予防法としてよく言われるのが、手洗い、うがい、マスク着用です。

ライノウイルスによって起きる普通感冒の場合、ウイルスが手指に着いて感染することがあるため、手をひんぱんに洗うことは、予防に有効です。 

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